【理事長ブログ】iPS細胞とパーキンソン病の最新研究
パーキンソン病とは
パーキンソン病は、中脳の一部である黒質という部分の神経細胞が減少し、ドーパミンの分泌が不足することによって引き起こされる神経変性疾患です。ドーパミンは運動機能の調整や制御に重要な役割を果たしています。
そのため、パーキンソン病の主な症状としては、手や足の震え(振戦)、筋肉の硬直(固縮)、動作の緩慢さ(寡動)、バランスの崩れや姿勢の不安定さなどが挙げられます。初期の症状が軽度であるため発見が遅れることもありますが症状は徐々に進行していきます。
国内のパーキンソン病患者数
最新のデータによると、日本のパーキンソン病患者数は約30万人と推定されています。発症年齢については、一般的に50歳以上の高齢者に多く見られますが、若年性パーキンソン病と呼ばれる30歳未満の患者も存在します。発症年齢が若いほど、病の進行が早くなる傾向があります。
パーキンソン病の治療
現在、パーキンソン病の根治治療は存在しませんが、薬物療法やリハビリテーション、手術などを組み合わせることで症状のコントロールや病気の進行を遅らせることができます。特に、レボドパという薬はドーパミンの前駆体であり症状の緩和に効果的とされています。
iPS細胞を用いた新しい治療法の研究
そして、パーキンソン病に対してiPS細胞を用いた新しい治療法も研究されています。
iPS細胞とは「人工多能性幹細胞」とよばれ、人間の皮膚や血液などの体細胞に、ごく少数の因子を導入し、培養することによって、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力とほぼ無限に増殖する能力をもつ多能性幹細胞に変化します。
再生医療により将来的にパーキンソン病の治療法が大きく進展する可能性があると期待されています。
ドーパミンを作り出す細胞をiPS細胞から作り出し、その細胞を脳に移植することで、もとのようなドーパミンの分泌を再開させることができます。この治療法は日本の企業、スミトモファーマが開発を始めたもので、同社はパーキンソン病の薬「トレリーフ」を開発した実績があります。
そして、この治療法はアメリカのサンディエゴで臨床試験が行われており、現在は臨床試験フェーズ1が行われているようです。臨床試験ではiPS細胞のリスクによる有害事象がないかどうかも慎重に確認されることでしょう。臨床試験が進み、フェーズ3や4に到達すれば、2、3年以内に一般的な治療法として利用できるようになるかもしれません。
この治療法が確立すれば、パーキンソン病患者はドーパミン補充の薬を飲む必要がなくなり、運動機能の改善や他の症状が緩和されることが期待できます。脳への細胞移植はリスクを伴いますが、最新の医療技術によって根治が困難であった病気が治る時代がまもなく来るのではないかと期待しています。