【尿路結石】iPS細胞から結石を溶かすマクロファージ
名古屋市立大学の研究チームは、ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)から尿路結石を溶かす能力を持つマクロファージを作製することに世界で初めて成功しました。尿路結石は腎臓や尿管に形成され、激しい痛みを伴う疾患であり、日本では約10%の人が罹患しているとされます。再発率も高く、5年以内に50〜60%の患者が再発するという報告もあります1。
従来の治療法は、自然排出を待つか、衝撃波や内視鏡による破砕手術が主流でしたが、これらは既に形成された結石への対処に過ぎず、予防や再発防止には限界がありました。今回の研究では、iPS細胞から分化させたマクロファージを用いて、尿路結石の主成分であるシュウ酸カルシウム一水和物を溶解する能力を検証。特に抗炎症性のM2型マクロファージが、炎症性のM1型に比べて最大5.6倍の溶解率を示しました。
この成果は、マクロファージを活用した新たな治療薬の開発に向けた大きな一歩です。iPS細胞を用いることで、安定的かつ大量にマクロファージを供給できるため、創薬スクリーニングにも応用可能です。今後は、結石溶解を促進する薬剤の探索や、予防薬の開発に向けた研究が加速すると期待されています。
この技術が実用化されれば、尿路結石の再発を防ぎ、患者の生活の質を大きく向上させる革新的な治療法となるでしょう。
研究グループ:名古屋市立大学(日本)
参照:2024年4月9日 名古屋市立大学プレスリリース