【角膜】iPS細胞による角膜再生で視力回復──世界初の臨床試験が成功

大阪大学の研究チームは、重度の眼疾患「角膜上皮幹細胞疲弊症」の患者に対し、iPS細胞から作製した角膜上皮細胞シートを移植する世界初の臨床試験を実施し、無事に終了しました。この疾患は、角膜の表面を修復する幹細胞が失われることで、視力が著しく低下し、最悪の場合は失明に至る難病です。

今回の臨床試験では、4名の患者にiPS細胞由来の角膜細胞シートを移植し、1年以上にわたって経過を観察。その結果、全症例で腫瘍形成や拒絶反応といった安全性の問題は一切発生せず、治療の安全性が確認されました。また、重篤な角膜混濁を抱えていた患者の視力が大きく改善し、最も効果が見られた症例では、矯正視力が0.15から0.7にまで回復したと報告されています。

この成果は、従来の角膜移植で課題となっていたドナー不足や拒絶反応のリスクを克服する可能性を示しており、再生医療の新たな扉を開くものです。今後は、より多くの患者にこの治療を届けるため、治験を経て標準医療としての実用化が目指されています。

研究グループ:大阪大学(日本)
参照:2024年11月8日 大阪大学大学院医学系研究科・医学部ニュース