【ALS(筋萎縮性側索硬化症)】iPS創薬で白血病治療薬が進行抑制に効果を示す臨床試験が成功
慶應義塾大学、ケイファーマ、アルフレッサ ファーマ、そして京都大学iPS細胞研究所の共同研究チームは、難治性の神経疾患であるALS(筋萎縮性側索硬化症)に対し、iPS細胞を活用した創薬によって見出された白血病治療薬「ロピニロール塩酸塩」の臨床試験を実施しました。その結果、ALS患者の半数以上に病気の進行を抑える効果が確認されるという画期的な成果が得られました2。
ALSは、運動神経が徐々に障害され、筋力低下や呼吸困難を引き起こす進行性の病気で、根本的な治療法が存在しない難病です。今回の研究では、患者の血液細胞からiPS細胞を作製し、それを神経細胞に分化させて薬剤の効果を事前に検証する「iPS創薬」の手法が用いられました。これにより、ロピニロールがALSの病態に有効であることが予測され、実際の患者への投与に踏み切ったのです。
臨床試験では、ロピニロールを1年間投与した結果、病気の進行が平均で約7か月遅れる可能性が示されました。特に、最初の6か月間では筋力低下や活動量の減少が有意に抑えられたことが報告されています。また、安全性に関しても問題はなく、すべての患者が最大用量を継続して服用できたとのことです。
この成果は、既存の治療薬では効果が限定的だったALSに対し、新たな治療選択肢を提供する可能性を示すものです。さらに、患者ごとにiPS細胞を用いて薬の効果を予測することで、個別化医療(テーラーメイド医療)の実現にもつながると期待されています。
今後は、第Ⅲ相試験に向けた準備が進められており、より多くの患者にこの治療が届く日も近づいています。iPS細胞が切り拓く未来の医療が、ALSという難病に新たな光をもたらし始めています。
研究グループ:慶応義塾大学(日本)、ケイファーマ(日本)、アル フレッサ ファーマ(日本)、京都大学iPS細胞研究所(日本)
参照:2024年6月12日 日本放送協会(NHK)配信ニュース