【1型糖尿病】1型糖尿病が“治る”可能性
中国の北京大学と南開大学の研究チームは、1型糖尿病の患者に対して、患者自身の細胞から作製したiPS細胞を使って膵島(インスリンを分泌する細胞の集まり)を移植することで、世界で初めて治療に成功したと発表しました。この成果は、2021年に医学誌『Cell』で報告され、さらに『Nature』にも関連研究が掲載されるなど、国際的にも大きな注目を集めています。
研究では、患者の脂肪細胞からiPS細胞を作り、それを膵島細胞に育てて、腹部の筋膜の下に移植しました。対象となったのは、1型糖尿病を11年間患っていた25歳の女性。移植後、約75日でインスリン注射が不要となり、血糖値は安定。その後も1年以上にわたり、インスリン分泌が正常に維持されていることが確認されました2。
この治療法の大きな特徴は、患者本人の細胞を使っているため、拒絶反応のリスクが低く、安全性が高いことです。実際、移植後の副作用はほとんどなく、腫瘍化などの懸念も見られませんでした。
これまで1型糖尿病は、インスリン注射による対症療法が中心で、根本的な治療法は存在しませんでした。しかし今回の成果は、「治らない病気」から「治る可能性のある病気」へと大きく一歩を踏み出したことを意味します。
今後は、より多くの患者にこの治療を届けるため、大規模な臨床試験や技術の標準化が求められますが、iPS細胞による再生医療が糖尿病治療の未来を大きく変える可能性が見えてきました。
研究グループ:北京大学(中国)、南開大学(中国)
参照:2021年 医学誌「Cell」発表「Nature」掲載