世界が挑むiPS実用化 2025.9 讀賣新聞オンライン
日本発のiPS細胞技術が、再生医療の実用化に向けて世界的に注目を集めている。慶應義塾大学の岡野栄之教授によれば、近年は米国や中国をはじめとする19か国が本格的に臨床試験に取り組み始めており、iPS細胞の国際競争が加速している。
科学誌「Cell Stem Cell」によると、2010年から2025年1月までにiPS細胞およびES細胞を用いた臨床試験は計115件にのぼる。2016年まではES細胞が主流だったが、2020年以降は倫理的な利点や安全性の高さからiPS細胞の利用が急増。国別では米国が38%、中国が15%、日本が12%と続く。
日本では、2014年に加齢黄斑変性の治療で世界初のiPS細胞臨床応用が行われ、2018年にはパーキンソン病、2020年には心臓病への応用が始まった。これらの成果が世界の研究機関に影響を与え、iPS細胞への切り替えが進んでいる。
京都大学iPS細胞研究財団(理事長:山中伸弥教授)は、2015年から企業向けに高品質なiPS細胞を提供しており、現在では提供先の約4割が海外企業となっている。
国内企業も海外展開を強化しており、大阪大学発のベンチャー「クオリプス」は、心臓病治療用の細胞シートを開発し、スタンフォード大学と共同研究契約を締結。また、住友ファーマはiPS由来の神経細胞を米国に空輸し、臨床試験に提供。2030年代後半には約3,500億円規模の収益を見込んでいる。
日本の技術と臨床成果が世界の再生医療市場を牽引する中、iPS細胞の実用化は国際的な競争と協力の新たなステージに突入している。
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