幹細胞培養上清液は、間葉系幹細胞(歯髄細胞、脂肪細胞、臍帯由来細胞など)を培養する際に分泌される生理活性物質を含む培養液です。
特に歯髄細胞培養上清液(Dental Pulp Stem Cell Conditioned Medium, DPSC-CM)は、歯の中心部にある歯髄から採取した間葉系幹細胞を培養する際に分泌される生理活性物質を含んでいます。上清液に含まれるエクソソームは、細胞が生成し放出する直径30-150nmの細胞外小胞であり、他の細胞と情報を交換し、生命の維持にとって非常に重要な役割を果たしています。また、成長因子、サイトカイン、幹細胞培養上清液など、組織修復と再生に重要な役割を果たす5000種類以上の生体分子が含まれています。
当院では高次医療機関や研究機関が、治療や研究の目的で使用する幹細胞培養上清液を取り扱っております。安全性と品質管理を最優先に考え、以下の基準を満たした製剤のみを使用しています。
| 日本国産製剤の使用 |
海外製品と比較して、より厳格な品質管理基準のもとで製造された国産製剤を採用 |
|---|---|
| 高いトレーサビリティ |
ドナー、製造者、製造工程、品質管理といったトレーサビリティの透明性を最重視 |
| 製造施設の認証 |
厚生労働省認可の細胞培養加工施設(CPC)で製造された製剤のみを使用品質 |
| 検査の徹底 |
細菌・ウイルス検査、エンドトキシン検査、マイコプラズマ検査等の安全性試験をクリア |
幹細胞培養上清液に効果が期待できる理由
| 炎症を抑制する力 |
幹細胞培養上清液に含まれるエクソソームは、体内の炎症を引き起こす要因を抑える役割を果たし、身体の回復を促進します。そのため、損傷した組織が回復しやすくなり、炎症の広がりを防ぎます。この働きは、病気の進行を抑えることにもつながり新たな治療法として注目されています。 |
|---|---|
| 細胞を修復する力 |
エクソソームは、損傷した細胞を再生させる力を持っています。エクソソームのもつ特定のシグナルが細胞に届くことで治癒の過程が加速され、組織の機能が向上します。 |
| 免疫を整える力 |
エクソソームは、体の免疫バランスを整える働きをします。過剰な免疫反応を抑えたり、不足した反応を促したりすることで、体が適切に健康を保てるよう助けます。この力によって、免疫系が過敏になることや弱まることを防ぎ、病気になりにくい体づくりをサポートします。 |
細胞フリー治療としての安全性
従来の細胞移植治療と異なり、細胞そのものではなく細胞が分泌する物質を利用するため、腫瘍化リスクや免疫拒絶反応のリスクが極めて低い「細胞フリー治療」として注目されています。この特性により、幅広い患者様に安心してご利用いただけ、既存治療との併用も可能です。
治療効果が確認されている疾患
神経・脳疾患
| アルツハイマー病 |
アルツハイマー病は、脳内にアミロイドβプラークが蓄積し、神経細胞の変性・脱落を引き起こす進行性の認知症です。
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|---|---|
| 糖尿病性神経障害 |
糖尿病の合併症として発症する末梢神経の障害で、手足のしびれや痛み、感覚低下を引き起こします。
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| 脊髄損傷・脳損傷 |
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心血管疾患
| 虚血性心疾患(心筋梗塞) |
心筋梗塞は、冠動脈の閉塞により心筋組織が壊死する疾患で、日本人の死因上位を占める重篤な疾患です。 虚血再灌流モデルマウスに歯髄幹細胞培養上清を静脈投与した結果
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|---|
整形外科疾患
| 変形性関節症 |
関節軟骨の摩耗と炎症により、関節痛や機能障害を引き起こす疾患です。高齢化社会において患者数が急増している疾患の一つです。
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| 骨粗鬆症 |
骨密度の低下により骨折リスクが高まる疾患で、特に閉経後女性に多く見られます。
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| BRONJ(ビスホスホネート関連顎骨壊死) |
骨粗鬆症治療薬であるビスホスホネート系薬剤の副作用として生じる難治性の顎骨壊死です。
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皮膚疾患・美容医療
| 創傷治癒促進 |
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|---|---|
| アトピー性皮膚炎 |
慢性的な皮膚炎症疾患で、かゆみや皮膚バリア機能の低下が特徴です。
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| アンチエイジング効果 |
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内臓疾患
| 肝疾患(肝硬変・慢性肝炎) |
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|---|---|
| 腎疾患 |
慢性的な皮膚炎症疾患で、かゆみや皮膚バリア機能の低下が特徴です。
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| 呼吸器疾患 |
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代謝・免疫疾患
| 糖尿病と糖尿病合併症 |
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|---|---|
| 自己免疫疾患(関節リウマチなど) |
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期待される効果効能
臨床応用において、以下の効果効能が期待されています
- 動脈硬化改善
- 疲労回復
- 免疫力向上
- 運動能力向上
- 記憶力向上
- 認知機能改善
- 血中年齢改善
- 心肺機能改善
- 肝機能改善
- COVID-19後遺症
作用メカニズム
幹細胞培養上清液の治療効果は、以下の複数のメカニズムによって発揮されます
| 抗炎症作用 |
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|---|---|
| 細胞保護・抗アポトーシス作用 |
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| 血管新生・組織修復促進 |
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| 神経保護・再生促進 |
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| 免疫調節作用 |
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投与方法
静脈内投与(点滴):全身への効果を期待する場合
関節内注射:変形性関節症などの局所治療
鼻腔投与:脳・神経疾患への直接的なアプローチ
局所注射:皮膚疾患や創傷治癒促進
安全性
細胞フリー治療のため腫瘍化リスクは極めて低い
重篤な副作用の報告なし(不十分な衛生管理による敗血症事象の報告あり)
既存治療との併用可能
幹細胞培養上清液の投与を控えていただいている方
- 18歳未満の方
- 妊娠または授乳中の方
- 悪性腫瘍治療中または悪性腫瘍の治療寛解から5年未満の方
- 幹細胞培養上清液によりがん細胞が発現することはありませんが、全身の細胞を活性化させ、がん細胞を増殖させるリスクがゼロと言い切れないため、悪性疾患の治療中または治療完解から、5年未満の方には投与を控えていただいております。
幹細胞培養上清液をさらに知る
| 「老化」は細胞が常に炎症を起こしている状態 |
幹細胞培養上清液は間葉系幹細胞から多く放出されますが、その幹細胞の数は、生まれた時を100%とした場合、10代では10%、50代では2.5%、80代では0.5%まで減少しています。 成人の体内では幹細胞が減少し、炎症を抑える幹細胞培養上清液も枯渇し、「炎症」、「細胞や組織の劣化」、「免疫機能の低下」が常に発生しています。これが体の不調を引き起こし、私たちは「老化」を実感します。 このような状態にある体に幹細胞培養上清液を注入すると、全身に驚くべき変化をもたらすことができます。若さと健康を取り戻すためのカギがここに存在します。 |
|---|---|
| 「善玉」と「悪玉」幹細胞培養上清液 |
幹細胞培養上清液は、人体にポジティブな影響をもたらす(善玉)ものから、逆にネガティブな影響を及ぼす(悪玉)ものまで、さまざまな種類が存在します。善玉幹細胞培養上清液は、炎症を和らげ、細胞の修復を促進し、免疫系を整える力を持っています。一方、がんや糖尿病、アルツハイマー、風邪といった感染症は、それぞれの病気特有の悪玉幹細胞培養上清液を利用していることが明らかになってきています。 |
| 豊富な成長因子とサイトカイン |
上清液の中にはEGF(上皮増殖因子、しみくすみ改善、ターンオーバー促進)、KGF(ケラチノサイト増殖因子、育毛・発毛、毛母細胞を活性化育毛促進)、IL-7(免疫細胞を活性化し、免疫機能を整える)、PGGF(血小板由来増殖因子、細胞分裂促進、線維芽細胞の増殖や修復を促進)などをはじめとした5000種類以上の成長因子やサイトカインが含まれています。これらが連携して、あなたの体を細胞レベルから強く、美しくします。 |
| 幹細胞培養上清液の臨床応用 |
アルツハイマー型認知症、脳梗塞後遺症、小児脳性麻痺、動脈硬化、糖尿病、アトピー性皮膚炎などさまざまな疾患に対する治療効果が研究により示されています。 |
治療支援制度のご案内
再生医療のさらなる進展を。
難病とされる病気が治る未来を目指し、医療の進歩にご協力ください。
| 治療支援制度の対象者 |
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|---|---|
| 支援制度の特徴 |
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| 脂肪由来幹細胞培養上清液 |
若くて健康なドナーの幹細胞に限定し、幹細胞の中でも5000個に1個の割合でしか存在しないエリート幹細胞のみを厳選使用した製品です。 |
医療費控除の対象になる可能性があります
治療・療養が目的の医療費に対し年間10万円を超えて支払った医療費(上限200万円まで)の額が所得から控除され、所得税・住民税が減額されます。
当院で扱う製品
| 歯髄由来幹細胞培養上清液 |
従来の10倍の濃縮が行われており、1本に500億個の幹細胞培養上清液が含有されています。成長する際に必要な成長因子やサイトカインを豊富に含み、さまざまな疾患やお悩みの改善が期待できます。 |
|---|---|
| 臍帯由来幹細胞培養上清液 |
日本臨床培養上清研究会(JSSCCS)からAランク評価を受けた安全性の高い希少な製品です。「再生医療等の安全性確保法」に基づき品質管理が徹底されています。 |
| 脂肪由来幹細胞培養上清液 |
若くて健康なドナーの幹細胞に限定し、幹細胞の中でも5000個に1個の割合でしか存在しないエリート幹細胞のみを厳選使用した製品です。 |
幹細胞培養上清液治療に関するQ&A
医薬品について
- 幹細胞上清液は現在のところ薬剤としては未認可であり「研究用試薬」の扱いとなっています。そのため、本治療は自由診療として実施されます。
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当院で取り扱う幹細胞上清液はトレーサビリティ等の厳しい基準を満たした以下国内認定施設様より納入しております。
- 歯髄由来幹細胞上清液:羽田天空橋クリニック
- 臍帯組織由来幹細胞上清液:セルプロジャパン株式会社
- 脂肪由来幹細胞上清液:セルソース株式会社
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幹細胞上清液治療は比較的新しい治療法であるため、以下の点についてご理解いただく必要があります
- 長期データの不足:治療開始から20年以上の長期的な予後や副作用に関するデータは、現時点では十分に蓄積されていません
- 継続的な研究:世界各国で臨床研究が進行中であり、長期安全性に関するデータは今後順次蓄積される予定です
- 定期的なフォローアップ:当院では治療後の経過観察を重視し、長期的な安全性確保に努めています
- 未承認医薬品等は医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度の救済制度の対象にはなりません。
免責事項
- 本治療が試験用試薬を使用した自由診療であること
- 長期予後に関するデータが限定的であること
- 治療効果には個人差があること
- 既存の標準治療との関係性
- 治療に伴う費用について
- 治療後のフォローアップの重要性患者様の安全を最優先に、十分な説明と同意のもとで治療を実施いたします。ご不明な点やご心配な点がございましたら、遠慮なくお申し出ください。
科学的エビデンス・参考文献主要論文
- Mita T, Yamamoto K, Hirata Y, et al. Conditioned medium from the stem cells of human dental pulp improves cognitive function in a mouse model of Alzheimer's disease. Behavioural Brain Research. 2015;287:32-38. DOI: 10.1016/j.bbr.2015.02.045
- Yamaguchi S, Shibata R, Yamamoto N, et al. Dental pulp-derived stem cell conditioned medium reduces cardiac injury following ischemia-reperfusion. Scientific Reports. 2015;5:16295. DOI: 10.1038/srep16295
- Makino E, Nakamura Y, Shibata R, et al. Conditioned media from dental pulp stem cells improved diabetic polyneuropathy through anti-inflammatory, neuroprotective and angiogenic actions: cell-free regenerative medicine. Journal of Diabetes Investigation. 2019;10(3):809-819. DOI: 10.1111/jdi.13045
- El Moshy S, Radwan IA, Rady D, et al. Dental stem cell-derived secretome/conditioned medium: The future for regenerative therapeutic applications. Stem Cells International. 2020;2020:7593402. DOI: 10.1155/2020/7593402
追加参考文献
- Zhang Y, et al. Exosomes derived from human umbilical cord mesenchymal stem cells rejuvenate aged skin cells. Aging (Albany NY). 2020;12(12):11401-11411.
- Kim MS, et al. Exosomes derived from human adipose tissue-derived mesenchymal stem cells alleviate atopic dermatitis. Stem Cell Res Ther. 2019;10(1):375.
- Baharvand H, et al. Exosomes derived from human embryonic stem cells promote neuronal differentiation of neural progenitors via microRNAs. Stem Cells Dev. 2016;25(21):1580-91.
- 下田 麻子, 舘野 浩章, 秋吉 一成. 糖鎖を基軸とするエクソソームの多様性解析と生体応答・制御. 生化学. 2023;95(3):234-245.
- 杉浦 圭, 本城 麻衣, 星野 歩子. エクソソーム含有タンパク質によるがん転移機構と診断バイオマーカーの解析. JSTAGE. 2023;52(4):112-128.
- 松井 貴英, 福田 光則. エクソソーム分泌を制御する細胞内分子基盤. 生化学. 2023;95(2):156-168.
- 田中 陽子. 老化細胞から分泌されるエクソソームのがん病態における役割の解明. 科学研究費助成事業研究成果報告書. 2022年4月.
まとめ
幹細胞培養上清液治療は、豊富な科学的エビデンスに基づく革新的な再生医療技術です。従来の治療法では限界のあった疾患に対しても、安全かつ効果的な治療選択肢を提供します。特に、細胞フリー治療という特性により、幅広い患者様に安心してご利用いただけ、既存治療との併用も可能です。5000種類以上の生理活性物質を含有し、抗炎症作用、細胞修復促進、免疫調節など多面的な治療効果を発揮します。当院では、最高品質の国産製剤のみを使用し、厳格な品質管理のもとで治療を提供しております。アルツハイマー病、心筋梗塞、糖尿病性神経障害などの重篤な疾患から、アトピー性皮膚炎、変形性関節症などの慢性疾患まで、幅広い適応が確認されています。今後も継続的な研究により、さらなる適応疾患の拡大と治療効果の向上が期待されています。患者様の安全を最優先に、十分な説明と同意のもとで、この革新的な治療技術を提供してまいります。